ドラゴン・テイル【外伝】
ッドォゥ………ン……ッ
闇夜に響きわたる突然の地響きに、ヴァルザックは弾かれたように顔を上げた。
──近いッ!
急いでウルの元へ踵を返す。
そう遠くない場所から、焦げっぽい匂いが流れてきた。
草や木が焼ける匂いと混じって伝わる、血の匂い。
ウルのいるはずの場所から強い熱気が吹き出していた。
『ウルッ! どうしたんだ?!
どこにいるッ!!』
ウルとラウラのいるはずだった場所は、砂埃が立ちこめていて全く見えない。
僅かに炎のような光が地面をゆらゆらと照らしていることだけが、辛うじて確認出来た。
熱気は、まるで平野火山のように大地からモンモンと吹き出している。人間が耐えられるような温度ではない。
─嘘だろう……? 一体何が……?
最悪の状況がヴァルザックの脳裏に過ぎり、焼け付くような地熱すら気にならないかのように、くすぶる炎を踏みつけて進んだ。
『ウルッ!! 返事をしてくれッ!』
足下に転がる塊を見つけ、ヴァルザックの思考が一瞬止まりそうになる。
ゆっくりと塊に近づいて拾い上げると、それは人間の欠片ではなく違う生き物のそれ。
『フェニーバード……』
小さく呟き、辺りを見渡す。
少しずつ晴れていく砂埃の中から、同じような塊が続々と現れ始めた。
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