ドラゴン・テイル【外伝】

 数としては、二十数匹。
 その残骸が、至る所に吹き飛ばされ、散らばっている。

 ──こんなにいたのか……何かが爆発でもしたのか……?

 呆然と立つヴァルザックの耳に、何かが地を踏み歩く足音が届いた。

「……ヴァル……」

 足音の主、ウルの声。

『ウルッ! 無事だったか?! 良か…』

 ヴァルザックはパッと声のした方を振り返り、言い掛けた言葉を呑み込んだ。

 ウルの身体にまとわりつくように揺れる黒い炎。

『ウル……お前がやったのか…これ……』

 驚いたように目を見開くヴァルザックにぎこちなく頷くウル。

「俺……フェニーバード見たら…一瞬、頭が真っ白になって…。
 気が…気が付いたら…こんな…」

 ウル自身も動転しているのか、喋る度に黒い炎が不安定に揺れ、吹き出しそうになる。

『落ち着け、ウル。もうフェニーバードはいない。
 深呼吸して、力を抜くんだ』

 なだめるように、ヴァルザックが静かな口調で言う。

 ウルもその言葉に従うように、深く、ゆっくりと息を吸い込んで、吐く。

 平静を取り戻していくと同時に、ウルの身体に取り巻いていた炎が消えていった。

 ほぅ……と小さく安堵の息を漏らし、ゆっくりとウルに歩み寄りながら、ヴァルザックはラウラの亡骸を探した。

 辺りにあったはずの茂みは跡形もない。

 激しい爆風に、一瞬で焼き尽くされたのだろう。

 ラウラも、恐らく原型は留めていない。

 ヴァルザックはそう予想していた。

.
< 69 / 160 >

この作品をシェア

pagetop