ドラゴン・テイル【外伝】



 いつの間にか、人間は深い眠りに落ちていた。






 新緑が満ちる小高い所に立っている。

 麓(ふもと)に広がる町が懐かしい。
 ここはどこだ?

 雲が、風が、まるでその町に吸い寄せられるように流れていく。


 それがすごく印象的で、男はその景色に見入っていた。



 遠くから走り寄ってくるのは、女性。

 茶色の髪を風に揺らし、嬉しそうに笑いながら。
 それなのに、目には涙を溜めている。



 ─俺は、あの女性を知っている……。



 あれは…………あの女性は………。






「うぉぃッ! 起きろよ」

 突然聞こえた声に、辺りが暗転する。

 重い瞼の感覚がはっきり伝わってきた。

 目を開くと、メシを取りに行くと言って出て行ったヴァルザックの顔。

「……なんだ。もう戻ってきたのか…?」

 人間の言葉に、ヴァルザックは驚いた顔をし、次いでため息を吐いた。

「もうってお前……俺が出てってから三時間くらい経ってんだぞ?」

 見ると、ヴァルザックの背後には火がたかれ、その上にある石鍋のようなものからグツグツと音が聞こえる。

「…すまん……夢を見ていたようだ…」

 人間が目を覚ました事を確認したヴァルザックは、木をくり抜いて作った器に石鍋の中身を取り分けながら言った。

「記憶喪失でも夢みるのか。どんな夢見てたんだ? メシの夢?」

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