ドラゴン・テイル【外伝】
─俺は、確かにヴァル以外のドラゴンを知っている。
初めて会った時、確かに懐かしい感じがした。
自分とどんな関係があったのかまでは思い出せないが、知っている。
これは、確信だ。
ふと辺りに視線を向ける。
西の空が朱色に染まり、東の空に群青色が満ち始めていた。
夜の訪れを告げる空の変化を見て、ウルはヴァルザックに声をかける。
今度は、消えそうな小さな声ではなく、ちゃんとヴァルザックに届くようにはっきりとした声で。
「ヴァル、そろそろ降りて寝床を探そう」
ウルの提案に、ヴァルザックは大きく頷くと高度をゆっくりと下げていった。
大地には小高い丘が所々にポツポツとあり、深い雑草に覆われている。
木は無く、見晴らしは良いが、寝るとなると少し不自由しそうな場所だ。
『ちょっと場所が悪いな……』
ヴァルザックが困ったように呟くが、見渡した限りではこれ以上もこれ以下の場所も見当たらない。
「今晩だけだし我慢するよ」
ウルの言葉にヴァルザックは小さく呻きながら、極力雑草の少ない場所を選び着地した。
『今日は俺の背の上で寝たらどうだ?』
地面に降り立ち、少しでも寝やすい場所を確保しようと雑草をかき分けるウルの背にヴァルザックが声をかけるが、ウルは僅かに顔をしかめて断った。
「寝違えそうだ。明日首が回らなくなるのは願い下げだぞ」
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