ドラゴン・テイル【外伝】

　手早く上半身だけ裸になったウルは、透き通る水に飛び込んだ。

　その様子を横目に、ヴァルザックが翼を大きく広げて伸びをする。

　ドドドドド………

　滝の音が響く中、気が済むまで翼を伸ばしたヴァルザックは、辺りの様子を窺うように視線を巡らせた。

　滝を取り囲むように広がる深い森。
　山独特の風景がそこにあった。

　木々の根元には、キノコが生えている。

　─今日はキノコのソテーでも作るか。

　まるで子持ちの母親のように昼食の献立を考えながら、キノコに鼻を近づけてフンフンと香りを確かめる。

　キノコを摘(つま)み上げ、ふと目の前にある木の枝を見ると、そこにぶら下がった真っ赤な木の実に目が止まった。
　その実をそのまま口にくわえてみる。

　─ふむ、毒は無いみたいだな。
　なかなか美味い。

　ウルにも食べさせてやろうと、一つ手に取り、滝壺の方を振り返る。

『………ウル……？』

　揺れる水面に、ウルの姿が無い。

　─……そう言えば、水に飛び込んでから浮いてきて無いような……。

　そう思うと同時に、慌てて水辺へ走り出すヴァルザック。

　その瞬間───。

　ドズンッッ

　鈍い地響きが足を伝い、水面が大きく膨れ上がる。

　ゴッポ……ッ

　大きな気泡が浮き上がると同時に、勢いよくウルが顔を出した。

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