ドラゴン・テイル【外伝】

「…ッハ! ゲッホ! ゴホッ!」

 激しく咳込みながらヨロヨロと水から這い上がると、地面に仰向けで転がる。

 ただならない状態で、荒々しく息をするウルを心配し、ヴァルザックが近付きながら声をかけた。

『どうしたんだ? 何かいたのか…?』

 自分の顔を覗き込むヴァルザックに、ウルは弱々しく手を振りながら答える。

「ちが……コホッ! 飛び込んだ拍子に川底の岩に足が挟まった…。
 死ぬかと思っ……ッ、ケホッ!」

『お前実はすげぇバカだろ』

 ウルの言葉につい間髪入れずに突っ込むヴァルザック。

「ははッ! かもな」

 水面に出られたことの安堵感がよほど強かったのか、ヴァルザックの言葉に怒ること無く笑い出すウル。

「でも、そのおかげで痒みは引いたよ」

 ウルの笑顔に、ヴァルザックは小さく息を吐いた。

 ─やっと笑ったな……。

 つられて、心の中に笑みを浮かべる。

『痒みが取れたんだったらもう行くぞ』

 さっさと服を取ってこいと言うように、ヴァルザックはパタパタと手を振った。

「了解」

 ヴァルザックの言葉に頷き、脱ぎ捨てた上着を取りに行くウル。

 水で軽く洗い流してから肩に引っかけるようにして持つと、身を屈めたヴァルザックの背に登る。

「さすがに汚れたな……。
グレイクレイで新しく服買わなきゃな」

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