ドラゴン・テイル【外伝】
崖のように切り立った山の横を一気に降下し、地面すれすれを低空飛行する。
辺り一帯は木も草もない荒れ地で、食べられそうな植物は一つも見当たらない。
─ずいぶんな荒れっぷりだな。
今日は魚にするか…。
早々と植物採取を断念し、川の方へ進路を変える。
ヴァルザックが川に視線を移した瞬間。
ドグォンッッ
何の前触れも無く、強い衝撃破がヴァルザックの体を吹き飛ばした。
───ッッ?!
油断もあり、意識を失いそうになったが何とか堪え、地面に激突する直前に体制を立て直す。
──ッく…! 何が、起こった…ッ?!
訳が分からず、体に走る痛みに耐えながら周りを見渡すヴァルザックの目に、赤い何かが映る。
『この前はやってくれたじゃねぇか……。
小僧、許さんぞ』
夕焼けから夜の帷(とばり)に包まれていく空の中で、鮮やかな赤い翼を広げたそれは、ヴァルザックを睨みつけて言った。
─レッドドラゴン……ッ!
内心で小さく舌打ちをするヴァルザックに、レッドドラゴンが急降下し体当たりをしてきた。
グルルルォォォォッッ!!
迫り来るレッドドラゴンに威嚇の声を上げ、牙を剥くヴァルザック。
ズグゥゥゥ……ン……ッ
激しい砂煙を巻き上げ、二匹のドラゴンが地面に激突した。
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