ドラゴン・テイル【外伝】

 崖のように切り立った山の横を一気に降下し、地面すれすれを低空飛行する。

 辺り一帯は木も草もない荒れ地で、食べられそうな植物は一つも見当たらない。

 ─ずいぶんな荒れっぷりだな。
 今日は魚にするか…。

 早々と植物採取を断念し、川の方へ進路を変える。

 ヴァルザックが川に視線を移した瞬間。

 ドグォンッッ

 何の前触れも無く、強い衝撃破がヴァルザックの体を吹き飛ばした。

 ───ッッ?!

 油断もあり、意識を失いそうになったが何とか堪え、地面に激突する直前に体制を立て直す。

 ──ッく…! 何が、起こった…ッ?!

 訳が分からず、体に走る痛みに耐えながら周りを見渡すヴァルザックの目に、赤い何かが映る。

『この前はやってくれたじゃねぇか……。
 小僧、許さんぞ』

 夕焼けから夜の帷(とばり)に包まれていく空の中で、鮮やかな赤い翼を広げたそれは、ヴァルザックを睨みつけて言った。

 ─レッドドラゴン……ッ!

 内心で小さく舌打ちをするヴァルザックに、レッドドラゴンが急降下し体当たりをしてきた。

 グルルルォォォォッッ!!

 迫り来るレッドドラゴンに威嚇の声を上げ、牙を剥くヴァルザック。

 ズグゥゥゥ……ン……ッ

 激しい砂煙を巻き上げ、二匹のドラゴンが地面に激突した。

.
< 87 / 160 >

この作品をシェア

pagetop