ドラゴン・テイル【外伝】

 ─何だ…?!

 巨大な地響きが耳に届き、ウルは火を焚く準備を止めて顔を上げた。

 辺りはみるみる内に暗くなっていく。

 ドゥン………

 ズズゥ……ン…

 遠くから聞こえる低い音は、止まるどころか激しさを増しているように聞こえる。

 ─何があってるんだ?

 遮るものは何もないパノラマ世界の中、音の出所を探すようにグルッと視線を巡らせるウル。

 その目線が、稲妻のように光る一瞬の閃光を捉えた。

 ─あそこか……? 結構遠いな……。

 そう思うと同時に、不意にヴァルザックの安否が気になった。

 ─ヴァルもこの音に気付いたはず……。
 なのに、何故戻って来ないんだ……?

 嫌な予感がする。
 その「予感」が「確信」に変わるまで、さほど時間はかからなかった。

 再び闇夜を照らした一瞬の光。

 その中に、青と赤の影が対峙していたのをウルは見逃さなかった。

 青い影は、間違いなくヴァルザック。
 ならば、その前に立ちはだかっていた赤い影は……──?

 ウルの頭の中で、迫り来る鋭い牙が映像になって甦る。

「レッドドラゴン……ッ!
 ……ヴァル…ッ」

 ウルの口から漏れた呟きは、静かに夜の闇へと溶けて消えた。

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