ドラゴン・テイル【外伝】

 ガッッ

 皮膚に食い込む牙の脇から、ドス黒い血が溢れ出す。

 グガゥァァァッッ!!

 怒号のような雄叫びを上げ、喰い付く牙を振りほどくように激しく身をよじる。

 遠心力に負けて皮膚を外れた牙から、口内に鉄のような味が広がった。

『不味いな』

 プッと吐き出し、そう呟いたのはヴァルザック。

 戦いは、この一撃で終わりを告げた。

 ゴフ……ッ! グフ……ッ!

 小さく咳込みながら、ヴァルザックを睨むレッドドラゴン。

『苦しいか? そうだろうな……。
 喉を潰した。息をするのも楽じゃないだろ? まぁ、潰しただけじゃないが』

 先ほどまで、ヴァルザックが食らいついていた傷口から、ドクドクと体液が流れ出していく。

 レッドドラゴンには理解出来なかった。

 体長も体格も、このブルードラゴンとは大して変わらない。

 水属性と火属性では、性質的に自分の方が有利だったはずだ。

 なのに、何故自分が追い込まれている?

 比較的に大人しいはずのドラゴンに、自分が負けるはずが無かった。

 ─なのに、何故だ?
 体の力が抜ける……こんなはずは……。

 ズゥゥ……ン……

 鈍い地響きを残して地面に崩れるレッドドラゴンに、ヴァルザックは冷ややかな視線を向けた。

『どんなに外からの打撃に強い生物でも、内面からの攻撃には耐えられないだろ』

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