ドラゴン・テイル【外伝】
思い出すように話すヴァルザックの表情は、嬉しそうで、悲しそうだった。
何故そんな顔をするのか、気にはなるが聞けない。そんな人間の表情を見て、ヴァルザックはまた笑った。
「ほら、俺らドラゴンって寿命長ぇだろ? 気の良い奴らはみんな死んじまった。今じゃ、俺を見て怯える人間ばっかりさ」
軽く話すが、その表情は辛そうで。
「俺は、お前を怖いとは思わねぇ」
思わず呟いた言葉に、ヴァルザックの笑みが消えた。
驚いたような顔の後に、真面目な表情で人間の瞳を真っ直ぐ見据えて言った。
「早く、記憶戻せよな。もしかしたら、誰かがお前を待ってるかもしれないんだ」
早く、帰れると良いな。
心の底から、そう思う。
気を取り直し、人間がヴァルザックの取り分けてくれた器に口を付ける。
ドラゴンの作る物なので一口目は少々度胸が必要だったが、それは思いの外美味かった。
器の中身を一気に完食する人間を見て、ヴァルザックが嬉しそうに言った。
「やっぱ腹減ってたんだな。食欲があるなら大丈夫だ。おかわりは?」
「もらう」
人間の差し出す器を受け取ると、石鍋の所に行き、中身を取り分ける。
それを二、三回程繰り返した頃、ヴァルザックはため息を付きながら呟いた。
「まるで親鳥だな……俺……」
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