ドラゴン・テイル【外伝】
□水流都市『グレイクレイ』
一夜明けただけで、ヴァルザックの傷は信じられないほど回復していた。
「…お前、本当に怪我してたのか…?」
思わずそう問いかけるウルの気持ちも分からなくはない。
『人間とは体の作りが違うのだよ』
「いや、作りが違うにも程があるだろ」
ウルの突っ込みに、ヴァルザックは笑いを含めた声で答えた。
『まぁ、作り云々(うんぬん)は別として、そもそもの生命力の違いってトコだ』
「……ふぅん…。そんなもんなのか…」
微妙な顔で呟くウルに、ヴァルザックは違う話題を振った。
『それより、すまなかったな。昨晩は結局飯食うどころじゃなかっただろ?
朝食、魚でいい?』
そう言い、人型へと姿を変える。
「あぁ……そりゃ良いんだが……。
本当に大丈夫なのか?」
問うウルに、軽くガッツポーズを向けるヴァルザック。
自分の心配を余所に、元気が有り余っているかのように動くヴァルザックを見ていると、何となく無駄な心配をしているような気がしてくる。
─まぁ……、本人が大丈夫って言うなら大丈夫か……。
ヴァルザックはドラゴンなのだ。
あれだけの巨体なら、ウルよりも遙かに長い時間を生きてきたはず。
自分の事くらい自分で分かるよな……。
ウルは気を取り直すと火を焚き始めた。
川の方では、ヴァルザックが軽快に水中から岸へ魚を弾き飛ばしている。
どうやら、ずいぶんと大漁のようだが、後々にその大半を「食べきれない」という理由から川へ返す事となった。
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