ドラゴン・テイル【外伝】

 大空高く舞うブルードラゴンの姿を下から見送るのは、どれくらい振りだろう…。

 ラウラと村を出て約三日後、、山の中で再会したんだったか……?

 あれから、まだたったの四、五日程度しか経ってないんだな。

 思った以上にヴァルザックと過ごした時間が長く感じて、虚しさが込み上げた。

 だが、すぐに気持ちを切り替える。

 確かにこの街並みには見覚えがある。
 でも記憶が戻った訳じゃない。まだ何も解決していないんだ。

 広大な川の先に見える街と時計台。

 その景色を確かめるようにじっと見つめていたウルの耳に、不意に音が飛び込む。

 ガザッッ

 何かが、草の上に落ちる音。

 音のした方へ視線を向けると、そこには一人の女性が立ち尽くしていた。

 風に揺れる、肩ほどまでの赤い髪。
 どこか、ラウラの顔立ちに似ているその女性がウルに向けている表情は、驚愕。

 何か言おうとしているのか、口をパクパクと動かしながら歩み寄ろうとして、先ほどその女性が落としたのだろう小さな籠に躓き、転びそうになる。

 だが驚いているのはウルも同じだった。

 ─知っている……。
 この人を、俺は知っている気がする。

 漠然とした思いがウルの心をかき乱す。

 ラウラに似ているからではない。
 確かに面影は似ているが、違う。

「………う……そ……。
 ……ウル………さん……?」

 掠れる女性の声は、川の上を吹き抜ける風に流され、ウルの耳に届いて消えた。

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