ドラゴン・テイル【外伝】

 向かい風の音が五月蠅(うるさ)いほど、耳を突く。

 それでも構わず、ヴァルザックは高速で飛行を続けた。

 胸にあるのは、ウルを心配する思いと、同胞を初めて手にかけたことへの罪悪感。

 ウルの手前、明るく振る舞っていたが、本当のところは理性を失いそうになるほど動揺していた。

 ただ、何も考えずに無心で飛行する。

 背中が妙にスースーする。
 物足りなさが、余計にヴァルザックの心を乱した。

 前方から迫る物体に気付いたのは、しばらく経ってから。

 遙か彼方に、光る何かが見える。

 速度を落とし、それが近付いてくるのをじっと見つめた。

 ヴァルザックの視界で、それが形を成していく。

 光の正体に気付いたヴァルザックの口から、声が漏れた。

『……ラーマ……?』

 ヴァルザックに気付いたシルバードラゴンが、ゆっくりと身をくねらせるように近付いてくる。

『お前は……確か北の空で会ったな。
 ヴァルザック……と言ったか。こんなところで再会するとは、奇遇だな』

 ラーマの言葉に、ヴァルザックは僅かに俯く。

『なぁ、ラーマ……。聞いても良いか?』

 以前会った時のような、ドラゴン独特の覇気が全く感じられないヴァルザックの小さな声に、ラーマは小首を傾げた。

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