Last Love
「あ…

 ここです。」

雷の恐怖に耐えながら

辿った家路は長かった。

彼がいなかったら、

きっと無事に

辿りつけなかっただろう。

「じゃぁ、僕はこれで。」

口角を少しだけ上げて

帰ろうとした彼の腕を、

愛はなんとなく掴んでしまった。

「ぁ、の…

 お名前、聞いてもいいですか。」

「名前…ですか?

 櫻井悠です。あなたは?」

「永島愛です。

 今日は本当に

 ありがとうございました。」

「いえ、じゃぁまた。」

久しぶりに、ドキドキした。

それは雷のせいもあるが、

善彦とは違う、

彼の男らしさだった。

善彦の紳士的な優しさとは違う、

頼りがいのある男らしさ。

「……ばかみたい。」

ドキドキしている自分が

嫌になった。

私には婚約者がいて、

彼にも恋人くらいいるはず。

そう、きっとこれは

ないものねだり。

恋心とは違う、と

愛は必死に

胸の高鳴りを

おさめようとした。
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