Last Love
櫻井は大雨の日の

記憶を辿り、

なんとか愛のマンションに

辿りついた。

「愛さん、起きて。」

愛を起こそうとしたが、

その寝顔を見ると、

なんだか申し訳なくなった。

だが、知り合って

間もない女性の家に、

どんな理由があっても

上がりこんではいけない、

そんな気がしていた。

しかも櫻井は、気付いていた。

愛の薬指に光る婚約指輪を。

だからなおさら、

ここで愛を起こさなければ

ならない気がした。

「愛さん、起きてください。

 つきましたよ。」

しばらく頑張ってみると、

ようやく愛は目を覚ました。

とはいえ、

酔いの方はまだ

覚めてないらしく、

相変わらず目は半開きだ。

「部屋まで行けますか?」

「うん…。」

それだけいうと、

とことこと歩いて

マンションに入っていってしまった。

その後ろ姿が

あまりに愛らしくて、

櫻井は思わず笑顔になった。

そして、自分も

マンションから

立ち去った。
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