Last Love
「愛さ……、あれ?

 どうしたんですか?」

タイミング悪く、

善彦が偶然通りかかった。

「副社長っ…。

 愛さんが急に

 なぐってきて…っ!!」

そんな猿芝居、

善彦さんが信じるわけないでしょ、

と愛は呆れて見ていた。

…が、返ってきた言葉は

予想外のものだった。

「本当なんですか?」

「え…?」

私が何の理由もなしに

人を殴るわけがない、

そんなことくらい

わかってくれていると

思っていたばかりに、

ショックだった。

「愛さんは悪くないんです。

 きっと私が最近

 副社長といる機会が

 多いから嫉妬して…。」

確かに、嫉妬はした。

でも、殴った理由は

それじゃない。

私だって、もう22歳だ。

そんな理由で人を

殴ったりしないよ、と

愛は思った。

けれど思うだけで、

うまく言葉が

出てこなかった。

「……もう、結構です。

 全部私が悪いんです。

 しばらく、距離を置きましょう。」

淡々とそういって、

愛はその場から立ち去った。
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