Last Love
「僕でよかったら、

 いくらでもお相手します。」

「優しいですね、櫻井さん。」

名前しかしらないような女に、

どうしてこんなにも

優しくしてくれるんだろう、と

不思議に思った。

「そういえば、愛さんって

 おいくつですか?」

「22歳です。」

「僕より年下なんですね。

 僕、24歳なんです。」

そんな気はしてた。

私よりは少し大人で、

けれど善彦さんほど

紳士な感じはなくて。

「敬語、やめません?」

愛は、言った。

「私、婚約してるんです、実は。

 その婚約者とも、

 ずっと敬語なんです。

 敬語って…疲れません?」

愛がこんなことをいうのも、

櫻井に心を開いている証拠だった。

出会って間もないのに、

と思うかもしれないが、

なんとなく、

この人なら信用しても大丈夫、

愛はそんな気がしていた。

「うん。もう会うのは4回目、

 くらいだし。」

「4回?」

「愛さ…いや、愛ちゃんが

 本を借りたときと、

 返しにきたとき。

 それから愛ちゃんが

 酔っ払ってたとき……。」

「え…?」
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