つらら飴
4章 うそつきあなた
 一気に進む酒の誘惑。
 ちびちび飲むのは柄じゃない。
 喉越し荒く咳き込む一人。
 腹式呼吸で息整える。
 何故か唇緩む夜。
 酔いに任せて火照る肩。
 故意に酔狂、身を委ね。
 座った瞳で遠く見る。
 西南函館あなたの場所を。
 携帯向けてコールする。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・はい」
「こんばんわー」
「・・・・・・こんばんわ」
「今、どこ?」
「・・・部屋だけど」
「今、何してるのー?」
「今は・・・テレビ見てた」
「一人で?」
「うん・・・・一人で」
「そーなんだ、私ねー髪切ったんだけど、見たくない?」
「・・・いや、今はいいよ」
「そー・・・調子はどう?」
「調子・・・少し、風邪気味かな」
「そー・・・お大事にね。お風呂入って、温かく厚着して、すぐに寝て、汗かいたら良くなるわよー」
「ああ、わかった。そうする。そっちはどうだ?寒くないか?」
「まーまー。今日なんて暖かくって、雪達磨作っちゃった・・・」
「・・・そっか・・・・今・・・飲んでるのか・・・?」
「あーちょっとだけね・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
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