コピー


川沿いを歩く。
夕暮れ。
手には一枚の紙。
目が痛くなるような赤い数字。























起立、礼、着席
先生の傍らには紙の束が置いてある。

テスト(採点済み)に違いない。

出席番号が一番のやつから名前を呼ばれ、その番号は段々と自分のものに近付いて行く。

僕は立ち上がった。

勉強しなかった、という罪を受けに行くのだ。

僕の罪が書かれたその紙を受け取り、眺める。

最悪だった。

親友山崎がニコニコと近付いて来る。

どうやらこいつは良かったらしい。
畜生。
お前、僕と一緒に遊んでなかったか?

僕は首を横に振りながらテストを山崎に向けた。

山崎は悪かったな、という顔をして、去ろうとする。

その瞬間山崎が手に持っていた回答用紙に書かれた点が見えた。

「お前、僕と一緒に遊んでなかったか?」

呼び止めて、今度は口に出して言う。

山崎はきょとんとする。

「何でお前は勉強時間は僕とほとんど変わらないくせに、点数は僕の二倍近く取ってんだ?」

全く、不公平過ぎる。

山崎はいつもの得意顔に戻って、
「それは君が真面目に授業を受けてないからさ。」

「あんなの眠いだけだろ。」

「授業を真面目に受ければ八割は理解出来るんだ。」

それはお前の頭がいいからだ。

「あとは残りの二割を適当に家庭学習で補完するだけさ。」

「そんなことでこんな点が取れるんだったら、クラス平均は八十、九十は行ってる筈だぞ。」

「ところで今日、試験の憂さ晴らしにカラオケにでも行かないか?」

テメェに憂さなんざねぇだろ、だがまあ、
「ああ、それもいいな。
もちろんお前のおごりだろ?」

「何でそうなる?」

「この前僕がおごったからに決まってるだろ。」

あー、えーと…

山崎はそう呟き懸命に思い出そうとしていた。

「あっ、すまん。」

そうやって、認めればいいんだ。

「そーいや今日、うちん家が経営してるマンションの仕事の手伝いがあったんだ。
済まないがまた今度な。」

違ってた。




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