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「アハハ。
そうか、それは大変だったな。」

通算五時間にも及ぶ地獄の講義の後、校長室にて山口先生が笑う。

校長は不在だった。

何か用事が入ったらしい。

「そう言えばそんなやつが最近いた。
名前は確か…
小川沙紀と言ったな。
幸い、『近藤拓郎』も完全に無視をしていたから、君の対応は正しかったというわけだ。
まあ、面白い体験になっただろう。」

そんな重大なことは早く言ってくれ。

お陰で死にかけた。

まあ半分は僕の煩悩が原因なのだが。

いや、前もって言ってもらっていたとしても、小川沙紀に対して心が揺れなかったと言う自信はないので僕の煩悩の方が主な原因なのか?

それはそうと、
「『近藤拓郎』に話しかける人が殆どいない中、積極的に話しかけようとする小川沙紀って結構変人ですよね。」

「ああ、まあな。
そう言ってもいいだろう。
興味があることはとことん突き詰めるが、興味がないことに対しては見向きもしない。
テストの点で言っても、悪い教科は赤点回避がやっと、いや、今年度でも二、三回は赤点を取っているな。
しかし、良い教科の点数では、近藤拓郎にも勝る。
レポートの内容も斬新。
近藤拓郎と同じく将来有望な生徒だ。」

「興味がないことには見向きもしないということは、小川沙紀は近藤拓郎に興味があるってことですか?」

「ああ、まあそうなるだろう。
もっと言うと、小川沙紀は近藤拓郎のことが好きなんじゃないか?その接し方から考えて。」

ふむふむ、小川沙紀は近藤拓郎が好き…

って
「えっ!?えっ!?えぇっ!?」

「何を興奮している。
小川沙紀が好きなのは君じゃなく、近藤拓郎だぞ。」

ですが先生。
今は僕が近藤拓郎の代わりをしているわけでして。

つまりだ、あのとき小川沙紀に抱き付いていたとしても、小川沙紀からは何のお咎めもなかったと言うわけだ。

周りに対しては色々まずいが。


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