コピー
図を頼りに、少しばかり遠回りもしながら、自分の部屋を発見した。

道中、すれ違う生徒達から、奇妙なものを見るような目で見られた。

そりゃ、びっくりするだろう。

誰とも関わりを持とうとしなかった近藤拓郎が女子を部屋に連れ込もうとしているのだ。

こんなショッキングな出来事は直ぐに噂として広がるのだろうな。

まあ、近藤拓郎らしく噂は気にしないことにしよう。

部屋の前には校長室と同じような数字盤があり、それに、
―山口先生と同じようにとは行かず、その十倍くらいの時間を掛けて数字を入力し、ドアを開いた。

「綺麗な部屋だね。」

小川沙紀が呟く。

本当に綺麗な部屋だった。

元からなのか、校長が片付けたのか。

本というものが見当たらない。

全部コンピュータの中なのだろうか。

キッチンはなく、何か大型な機械があった。

それが自動的に作ってくれるようだ。

真ん中に金属製の机があり、そのそばに一つ椅子があった。

部屋にはコンピュータが見当たらないので、校長の時と同じようにその机に内蔵されているのだろう。

ベッドは自分が知っているような『ベッド』の形をしていた。

近藤拓郎のこだわりだろうか。

椅子が一つしかないので、僕はそのベッドに腰掛けた。

小川沙紀も同じようにする。

「さっそくだけどさ、教えてよ、ここに来た経緯。」

「ここって?」

小川沙紀は僕がこの世界にいなかった存在だと知っているのか?

「この学校のことだけど?」

ああ、そうか。

それもそうだ。

そこまでお見通しではないらしい。



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