コピー



小川沙紀はよく喋った。

学校での人間関係について色々教えてくれた。

僕は僕の記憶の中の世界について、語った。

小川沙紀は何故か、いいな~、とうらやましがった。

「そっちの方が面白そうじゃん。」

「そうなのかな。
僕はまだ、この世界をよく知らないから何とも言えないけど。」

「ふ~ん。
じゃあさ、今度色んなとこに案内してあげるよ。
月に一回外出許可が出るんだ。
そのときにぜひ。」

「ああ、よろしく。」

そんなふうにして夜は更けていった。

小川沙紀が先に眠りに就いた。

僕は小川沙紀を眺めた。

襲ってしまいそうだ。

そういえば、小川沙紀は、ずっと近藤拓郎を観察していたから、僕がコピーであることに気付いた、と言った。

そのようなちょっとした違和感だけで、あなたは本物じゃない、と言うことが出来るだろうか。

暫く考え、こう結論づけた。

きっと、小川沙紀は近藤拓郎を溺愛していたのだ。

それで、僅かな違和感さえも許せずに、本人に、直接言って確かめるという行為に至った。

だとしたら、小川沙紀は結構危ない人物ではないだろうか。

小川沙紀と一つの部屋の中で一緒にいることに、少し恐怖しつつ、少し興奮しながら、夜を明かした。

眠れなかった。

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