コピー
「君は我々に、感情を持った生命体として認識されない。」
悪い予感が当たったようだ。
奴隷か何かにするつもりなのか?
「君は『近藤拓郎』によって作られた、彼のコピーだ。」
意味が分からない。
近藤拓郎は僕だ。
「しかし、そのコピーが不完全だったため、君はこの研究室を知らない。
そうだろ?」
こんな研究室初めて来た。
知るわけがない。
「そうは言っても、名前、誕生日、血液型などの君の持っている情報は実際の近藤拓郎のデータと一致している。
顔も酷似している。
君が『近藤拓郎』のコピーとして作られたことには間違いはない。」
女は僕を置いてけぼりにして話し続ける。
「ここで、『近藤拓郎』は何故君を作ったのかという疑問が生じる。
実は我々もそれはよく分からない。
だが、『近藤拓郎』は現在失踪しているため、それを隠蔽するために君を作ったのだと考えられる。」
夢だな、ああ夢だろ。
「また、君などのコピーに対する我々の認識なんだが、先程も言ったように、感情を持ってはいないだろうというのが一般的な考えだ。
感情というものはそこまで分かっていないからな。
では何故君を作ることが出来たのかというと、それは、そのままコピーすることは出来たからだ。
理論に基づいて『これはこうだからこれをこうしたらこうなる』といったことは分からないが、完成品をコピーすることで理論をすっ飛ばし、機械的に君を作ることができた。
公式をなんでそうなるのか分からないまま使用して、ただ値を代入し解を求めるようなものだ。
そんな、ただコピーして作られただけの物体に我々の高度な科学技術をもってしても解明出来なかった感情というものが宿る筈がないとお偉方は考えているようだ。」
早く覚めてくれ。
頭がおかしくなりそうだ。