加納欄のホワイトデー シリーズ9
「欄、お前大丈夫か?突然、何言ってんだよ」

「一般論として、男の人は、好きでもない人と、キスするんですか?」

「……一般論だったら、する奴も、中にはいるんじゃねぇの?」

そう答えた。

「…………」

「なんだよ。それが、どうかしたのか?」

あたしは、無言で、歩いて行った。


するんだ……。


そして、ふと、思い付いた。


あの時、大山先輩が、顔を近づけてきたのは、ホントに熱を計ろうとしただけだったり……。


あたしが、勝手に、キスされるって、勘違いしただけだったり……。


「そっか……。そうだよね……大山先輩が、あたしのこと、好きになるはずナイよね。バカみたい……勝手に勘違いして……」

独り言のようにつぶやくと、また聞き込みのため、外に出た。

雨は止んでなく、午前中より勢いがよかった。

「午後から晴れるって、言ってたのに」

あたしは、覆面車に乗ると、目眩を感じながら、柿野町へと、車を走らせた。

柿野町には、今追ってる事件の犯人が、潜伏するには丁度いい、廃墟の建物が、いくつかあった。

苫利先輩と周る予定だったが、苫利先輩は、研修が長引いている為、後で落ち合うことにしていた。

安全運転を心掛けて、目的地にたどり着いた。

身体に寒気を感じた。


熱上がった?


薬、飲みに戻ったのに、飲まないで署出ちゃったもんなぁ。


「ダルイヨォ~」


関節痛い。


「見回りも、聞き込みもしたくないよぉ」

そう思いながら、車から降りた。

雨はいっこうに止む気配がなかった。

傘をさしていても、あっという間に、靴もパンツも雨に打たれた。

とりあえず、聞き込みをしてまわった。

麻薬を所持した状態で、男性が、殺されたのだ。

ヤクザがらみも考えられるため、あたし達が動いていた。

男性は身分を証明するものがなく、捜索願いも、まだ出されていなかった。

殺されて、3日たつ。

殺されたのが、神田町だった為、道1本はさんで隣の柿野町も調べているところだった。

何件か聞き込みが終わり、立っているのが、辛くなっていた。

「ダメだ。薬買いに行こ」


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