加納欄のホワイトデー シリーズ9
孔明師範は、あたしの必死の抵抗を軽々とかわし、抱き上げるとベッドへ運び、服を脱ぎ始めた。




南署へ戻ったのが、夕方の6時30分を回っていた。

どうやって戻ったのか、記憶がなかった。

男2人を手土産に、夢遊病のように、南署に、戻ってきた。

「欄ちゃん!遅かったじゃないっ!すごい濡れちゃって!誰か!タオル!大丈夫?」

祥子先輩が、化粧をしていたけど、あたしのナリを見て、慌てて近寄ってきた。

あたしの、耳には、祥子先輩の声が、聞こえなかった。

膜が張ってあるみたいで、遠くのほうで話してるように聞こた。

「欄ちゃん?!しっかりしなさい!欄ちゃん?!ちょっと、大山さん来て!」

あたしは、ボーッと、突っ立っていた。

大山先輩が、あたしの前に来たのがわかったのも、時間がかかった。

「欄!どうかしたのか?あいつら何なんだ!欄!」

はじめて、肩を揺すられて、大山先輩が、目の前にいたのがわかった。

あたしは、思惑目を見張った。

心臓が、ドキンッ!!と大きく打った瞬間に、あたしの意識はなくなり、大山先輩の目の前で意識を失った。

「欄っ!!」

皆が、駆けつけたが、あたしは、目を覚ますことはなかった。




あたしが、目を覚ましたのは、倒れてから2日後だった。

真っ白い壁に、真っ白いカーテンが、風になびいていた。

「目が覚めた?痛いところない?」

看護師が、話しかけてきた。

「あ、私は……」

記憶がなかった。

「もう少しで、肺炎おこすところだったのよ。熱が、42度近くまであってね。だいぶ下がってきてるけど、安静にしててね。まだ、熱があるから」

「……はい」

看護師が、出ていった。

頭の中が、グルグルまわっていた。

それが、目眩だと気付くこともできなかった。

「吐き……そ」

あたしは、トイレに行こうと、ベッドから、起き上がった。

体力のなくなったあたしは、立つことも難しく、ズルズルっと、ベッドから、滑り落ちた。

「な、なんで?」

あたしは、あまりにも、動かない体を不思議に思った。

立とうとするけど、腕にも力が入らなかった。

「欄!大丈夫か!?」


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