加納欄のホワイトデー シリーズ9
お見舞いに来てくれた大山先輩が、あたしの惨状をみて、肩を貸してくれた。

気持ち悪さが少し治まったので、そのままベッドに横になった。

「大丈夫か?」

「……ハイ」

「祥子が、謝ってたぞ」

「え?」

「体調悪かったんだろ?オレも、気付いてやれなかった」

大山先輩が、イスに座った。

「な、何言ってるんですか。体調悪いのは、自分の事故管理のせいなんですから」

あたしは、大山先輩を見ないように答えた。

「欄、もぅ大丈夫なのか?」

「まだ、熱があるみたいですけど、大丈夫ですよ。明日から仕事できます」

「嘘をつくな。倒れてただろうが。ムリすんな」

「……ハイ」

「じ、じゃあ、行くわ。早く戻ってこいよ」

「ありがとうございました」

あたしは、大山先輩の背中を見送った。

1度も、大山先輩の顔を見ることはなかった。


次の日には、退院することができた。

体力もある程度回復したので、本日より南署に、出勤することにした。

「欄君。今日から出勤かい?」

「鮎川さん。おはようございます」

「もぅ大丈夫なのかい?突然倒れた時は驚いたよ。42度あったんだって?」

「そこまではないですけど。もぅ大丈夫ですよ」

「欄君、お手柄だったねぇ」

吉井さんも、加わってきた。

「お手柄?」

「欄君が、捕まえたあいつらが、自供したんだよ」

「あいつらって。あの2人組ですか?」

「そう。あいつらが、犯人だったんだ。よく見つけたよ。あの体調の中で」

「偶然です」

「今日は、無理しないで、ね」

「ありがとうございます」

「よぉ、欄」

高遠先輩が、挨拶にきた。

「あ、おはようございます」

「大変だったな。ゴミついてるぞ」

そう言って、高遠先輩は、あたしの前髪に触れようとした。

「イヤッ!」

あたしは、思惑高遠先輩の手を払いのけた。

孔明師範と重なった。

「欄?」

拒絶された高遠先輩が、少し驚いて、あたしを見た。

「あ、ごめんなさい。ちょっと、驚いちゃって」

あたしは、慌てて謝った。

「そうか」


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