続きは、社長室で。


社長の婚約者って、どんなヒトなの?



綺麗で、社長にお似合いのヒトだよね?



陽に当たって、キラキラと輝くような・・・



日陰の女でしかない私とは、正反対のヒト――



流れゆく街並みに眼をやりつつ、虚ろにそう考えていた。




「蘭って、案外ボーっとしてるんだな?」


「え、すみません・・・」


その声で隣を見ると、後藤社長がジッと捉えていて。


ククッと笑われてしまい、苦笑しか出来なかった。



それにね、どうしても言葉に詰まるの。



“蘭”と、呼ばれるコトに慣れなくて――



変だと思うけれど、自分の名前じゃナイみたい。



社長から、呼ばれないだけで・・・



何かにつけて、拓海の存在が脳裏をよぎる。


それほど私の成分は、彼で出来ているらしい。



ううん…、もう比べてはダメだよね――



社長は、婚約者のモノであって。



私はもうすぐ、後藤社長と・・・








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