続きは、社長室で。
ガチャッ――
自宅のドアを開けると、静かに扉を閉めた。
準備をし直すには、まだ30分以上余裕がある。
上司としての指示も、拓海としての命令も。
本当に、今日が最後なんだ・・・
「ん…、蘭なのー?」
「う…、うんっ!
雨露で濡れたから、シャワー浴びるね?」
「まぁー、急ぎなさいよ?」
リビングから、母の声が聞こえてきて。
俯き加減で、足早にバスルームへ向かった。
「・・・フゥ・・」
クレンジングをして、軽くシャワーを浴びた私。
あれだけ念入りにした、メイクとヘアだろうが。
オフするのは、あまりに容易いコト。
その一端さえも、社長室での行為を思い出させるなんて――
仕方がナイ、諦めるが常套句。
パンドラの箱には、いつも鍵を掛けていたのに。
アップヘア、スーツ、メイク・・・
全てが解き放たれるのを、待ち望んでいたの。