続きは、社長室で。
鋭さの中に、どこか危うさを含んでいて。
そんなブラウンの瞳が、私をジッと捉えている。
「っ…、しゃ、社長、あの――」
口から心臓が飛び出そうなほど、脈打つ鼓動を窘めつつ。
必死に紡ぎ出した言葉は案の定、上擦ってしまう。
だけれど、この瞳を逸らせない――
「ここでも仕事は、出来るだろう?」
「っ・・・」
薄めの唇が弧を描く事なく、私に答えを促してくる。
それらすべてが、高ぶる鼓動を表すかのように。
掴まれたままの左手は、俄かに震え出す・・・
「蘭・・・?」
「っ、はい…、あの、手を・・」
「あぁ、悪い」
この声で尋ねられたら、決定打を放たれたようなモノ。
私のすべては、社長が支配しているから――
開放された左手を、危うく右手で庇いそうになったけれど。
社長の前に再び、リングを晒したくなかったの。
今だけ…、このトキだけは――
両手の自由を取り戻すと、まずはカバンを探って。
社長室のPCと電話を利用し、キャンセルの旨を連絡した。