続きは、社長室で。
この僅かな時間に、リングの有無に気づいていたとは。
彼の鋭い観察眼と、頭の回転の速さには驚嘆させられる。
いとも容易く、相手を窮地に追い詰めてしまう巧妙さ。
自身の内面はヴェールに包み、表へは出さない真の顔。
後藤社長の醸し出すオーラが、さらに八方を塞いでいく・・・
「で・・・、詳しく話を聞かせて貰おうかな?」
答えかねる私に微笑して、ソファへと腰を下ろした。
ギシッ――
彼が足を組んだ時、スプリング音がやけに響き渡って。
「ッ・・・」
無言の重圧が圧し掛かり、心が折れそうになる。
「ハハッ、分かりやすいね!
その態度は、俺の推理を思いきり肯定してるけどなぁ。
よく正直者とか、嘘が下手だとか言われるだろ?」
立ち尽くす私を捉えたまま、ククッと一笑していて。
「い、いえ・・・」
彼の眼光に耐えきれず、視線を逸らしてしまった。
どうしよう…、言葉が出て来ない――
「ま…、まだ完全に俺の物とは言えないし・・・
今日の不貞だけは、特別に許してあげるよ。
別離を惜しむ、最後の奉仕はどうだった?」
「っ・・・」