続きは、社長室で。
こんなにも冷淡な眼を見たのは、初めて・・・
彼の“裏側”の一端を、垣間見たような気がした。
あのブラウンの瞳が、どれほど優しいモノだったのか。
感情の籠められない瞳が、どれほど人を傷つけるのか。
どうして今さら…、気づくのかな・・・
「っ・・・」
さきほどまで確かに、厚い胸に縋っていたのに。
拓海のさり気ない優しさで、包まれていたのに。
思い出す度に、辛さが込み上げようとしてくる。
それでも、私の思いを言わなければならなくて。
すべてを捨ててきたからこそ、負けてはいられない。
拓海との別離が、虚無と消えてしまう前に――
ゆっくりと視線を外すと、徐にカバンを探る私。
奥底で沈んでいるソレを見つけて、手のひらに収めた。
再びこちらを眺めたままの彼を見て、体勢を整えると。
「お返し致します…」
震える声ながらも、詰まることなく言い切れて。
コト――
艶めくテーブル上に置くと、彼の眼前へスッと近づけた。
「どういう事だ?」
「申し訳ございません…、私には無理です」
上半身を折り曲げて、平身低頭のまま告げる私。