続きは、社長室で。


拓海とは全く違う、軽やかな柑橘系の香りに包まれてしまう。



「…後と・・っ・・」

拒否しようとしたけれど、その声すら出せなくなった。


ギュッと引き寄せられた腕の力が、あまりにも強力すぎて。


否応ナシに私は、彼の胸へと顔を埋めてしまう形になる。




「ったく…、雅貴だって言っただろ?」


「・・・・」

嘲る後藤社長に、何も返す言葉が見つからない。



呼吸をする度に鼻腔を掠めていく、オレンジのような爽やかさ。


万人受けするこの香りが、不快に思えてならないの・・・




「佳奈子に会わせたのは、蘭に現実を見せる為だよ。

俺がどれだけ真剣か…、分かってくれた?

ついでに…、敵に回すとどうなるのか――」

フッと一笑しつつも、その発言に恐怖を漂わせる中で。



「っ――!」

背中に回っていた片手が外され、その手で私の髪を梳いていて。


毛先までなぞる触れ方が、途端に悪寒を走らせていく。



拓海によって崩されたヘアで、すぐにアノ行為が蘇ってしまう。


愛でるような手つきも、しなやかな指先も、何もかも・・・




どうすれば、忘れられるの…?



どうやれば、キライになれるの…?




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