続きは、社長室で。


ハハッと嘲笑う後藤社長の声に、何も反論が出来なくて。


私の内心では、猶予を作って逃げたような罪悪感も感じた。




それにこんな心境では、アノ行為などムリ・・・




婚約者の存在を知った以上、妾であろうとも出来なくて。



拓海の方からも秘書になって初めて、誘われる事が無かった2日間。



誘われなくてホッとしつつも、隔てられたキョリで心が痛んでいた。




このまま…、もう抱かれるコトは無い気がしたから・・・





「・・・・・」

少しの間ギュッと眼を瞑ると、邪な思いを振り切った。



進む道標が変わらなかったとしても、それは仕方がナイ。




だけれどギリギリの瞬間まで、夢を見させて――







「行って来ます!」


玄関先まで見届けてくれる母に、珍しく声を上げた私。



「ハイハイ、粗相のない様にね!」


「そうだね・・・」


それなのにニッコリと笑って、常套句を告げられたから。



結局、いつも通りの乾いた笑いしか出来なかった・・・





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