続きは、社長室で。
潤んだ瞳を誤魔化すため、パチパチと瞬きを繰り返したあと。
少し眼の赤い母と笑い合ってから、ドアに手を掛けた。
この先に何があろうとも、私らしくいたい・・・
「行って来ます!」
再度言い直すと、自身も一緒に奮い立たせた。
ガチャッ――
玄関の扉を開けた先には、見慣れた外車が待ち構えている。
今日の車は私が一番好きな、真っ赤なフェラーリ。
運転席からジッと捉えている、ブラウンの瞳と眼が合った。
「おはようございます」
「あぁ・・・」
「…お待たせして申し訳ございません。
失礼します――」
社長の態度でチクリと痛む心を宥めると、秘書の鎧を纏ってしまう。
3日目とはいえ、今日も変わらずに仕事なのだから。
急いで助手席に乗り込むと、車はエンジン音を響かせて発車した。
この軽快な走りに乗せられて、ドキドキだけは止まらない。
何を隠しているのか、一切解らない貴方に・・・