続きは、社長室で。
高いキーの轟音とともに、地面を這うように走るフェラーリ。
それでも滑らかな走行であるのは、社長の技量の賜物だと思う。
助手席に乗るコトさえ、もう叶わないと思っていたけれど。
3日間という猶予の博打が、ささやかな喜びを齎してくれた。
すべては、拓海の言葉がキッカケで――
精悍であり、ポーカーフェイスの横顔をチラリと窺ってみた。
一切の表情を読み取れるワケもなく、いつもと同じで・・・
社長としても、拓海という人間は掴めない――
そうして彼を盗み見ていると、いつも右折する交差点を直進してしまう。
今のって…、間違えているよね?
「あ、あの・・・
右折地点を…、通り過ぎませんでしたか?」
失礼にならないよう、恐る恐る尋ねてみた。
「今日は良いんだ。
この道で間違いない――」
「そ、そうでしたか…。
失礼致しました・・・」
淡々と話す社長の声で、恥ずかしさだけが募ってしまう。
車好きな社長は、都内ならナビも使用しないほど地理に詳しい。
そのうえ会社を間違うなど、あり得ないというのに。