続きは、社長室で。
暫らく流れた沈黙は、呼吸さえ憚られてしまうほど。
沸々と込み上げる何かが、それを助長しているというのに・・・
「っ・・・」
緩まりそうな涙線を鎮めようと、グッと歯を噛み締める私。
グイッ――
すると隣から左腕が伸びて来て、ホワイトムスクの香りに包まれた。
私を繋ぐ腕の力を強めると、ひとつ溜め息をついた拓海。
「後藤さん・・・
貴方の側近が認めた以上、もう認めざるを得ませんね?
金輪際、蘭に近づかないのでしたら、刑事告訴は致しません。
どうなさいますか・・・?」
「っ…、クソッ――」
バンッ――
収まりきらない怒りが、テーブルへ向けられたけれど。
それ以降、後藤社長が口を開くコトは無かった…――
「ほら、行くぞ・・・」
「っ・・・」
スッと差し出されたその手で、涙が零れてしまうというのに。
それでも現実へと…、拓海の許へと戻れる幸せに包まれたから。
涙を拭ったあと、ベルガモットの香りと離別するコトが出来たの――