続きは、社長室で。
ガチャッ――
開かれたドアの先には、久方ぶりの光景が出迎えてくれて。
バラ、トルコ桔梗、カサブランカ・・・
お花好きな奥様らしい、花に囲まれた優雅な暮らしを感じさせた。
バタンッ――
拓海が玄関の扉を閉めると、もう後戻りなど出来なくて。
浅く深呼吸をして、どうにか自身を保とうとしたトキ。
「拓海…、遅いじゃない――
蘭ちゃん、待っていたのよ!」
「あ、お、奥様…、申し訳ございません――」
奥様の登場にしどろもどろの私は、何故だか謝罪をしてしまう。
「フフッ、どうして謝るのよ?
ほら2人とも、早く上がりなさい」
「あぁ――」
そう返事をしたあと、スタスタと室内へと向かった拓海。
「…お邪魔します――」
パンプスを脱いで揃えると、拓海の後ろをついて行った。