続きは、社長室で。
向かって行く先は、何処なのかを覚えているから不思議なモノで。
その部屋を眼前にして、私の心臓は煩いほどに鼓動を刻み始めた。
スーっと襖を開けば、其処は厳かな雰囲気の広々とした和室――
江戸時代から続く、東条家の家紋が施された欄間と代々受け継がれる調度品の数々。
どの品もあまりに希少すぎて値段などつけられないと、母から聞いている。
「2人とも、やっと来たか――」
だけれど、それ以上に存在感を放つ人物が構えていた。
「えぇ、只今戻りました」
「っ・・・」
此処は東条財閥総裁である、旦那様の部屋なのだ・・・
常日頃は殆ど日本にはおらず、各国のグループ企業を治める旦那様。
こうして会うのは数えるほどで、物凄く緊張してしまう。
部屋中に立ちこめる厳かな雰囲気と、拓海と同じ顔を持つ旦那様。
あまりの居た堪れなさに、襖の側で佇んでいると・・・
「蘭ちゃん、席についてくれる?」
「あっ、ハイ――」
旦那様の隣に座る奥様が笑い掛けてくれて、物凄く安堵させられた。
そうして拓海の隣におずおずと座ると、俯き加減で構えてしまう私。
この状況の意味など、分かるハズもなく――