花火
顔がほてっていくのがわかった。暗くてよかった。


ほんの五分前のさみしさが嘘のように消え、胸がたかなっていた。


今まで見たどんな花火よりも綺麗な花火が打ち上がる。


「樋口さんは?大学生?」


「俺は立派な社会人だよ」


樋口さんは金魚の袋を持ち上げて金魚を観察しながら答えた。


「うそっ」


「ほーんと。24だし。」


「見えない!幼いね」


「…若いって言ってくんない?」


遠くで人のざわめきが聞こえる。

いつの間にか花火が終盤に差し掛かっているらしい。

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