キミヲモイ。
パラッ
小さなメロディーを聞いていると、ピアノの上から薄い本が落ちた。
楽譜じゃなくて、ちょっと丈夫そうな青い本。
それがガサッと広がっていて、拾いあげようと腰を曲げた。
「あかん! ……見たら、あかんねん」
僕の先を越えて修二が素早く拾う。
とても大切そうにその本を見つめる修二の顔は、夕方の日に照らされて黒くなっていた。
「何それ?」
「言えん言わん教えられん」
ギュッと強く抱く修二は、少し深刻そうに俯いた。
「おすそ分け持ってけや、運ぶで」
優しい声で話を変えられ、変えた本人はピアノから落ちた本をその上にある棚に乗っけた。
僕が里芋、修二が金ぴらごぼうを持って部屋を出る。
こっちに来るときと違って、僕が前を歩いていた。