キミヲモイ。
sostenuto
♪〜♪
幸せってあるんだねここに
実感ないけど
ちゃんとここにあるんだ
大丈夫、怖いものなんてない
そう言った君の背中を
僕は信じるよ
♪〜♪
濃い赤茶色のアコースティックギターを弾きながら、メロディーに歌詞を乗せて。
いろんな人がせわしなく通っていくのを見ながら、一人歌っている。
駅前で頼りなく弾き語っているのは、まさに自分で。
安住 裕梨<アズミ ユウリ>、19才。
高校を卒業してから2ヶ月、ここでストリートミュージシャンをしている。
段ボールに昔からの愛称、“ユウ”と書いて。
こんなのダサいかもしれないけど、それなりに気に入ってるんだ。
「ユーウさん♪」
次の曲を歌おうとしたとき、機嫌良さそうな、茶化した声が聞こえてきた。
視線を上げれば、前にはビニール袋がぶら下がっていた。