キミヲモイ。
allegro
「着いたで」
そう言って、少し振り返ったときもいつもの笑顔。
額には汗がついていたのに、また余裕を感じるんだな。
「ここ……」
僕は先に自転車を降り、すぐ右を見る。
「俺のバイト先や。ちょうど今大忙しやねん」
修二も自転車から降り、左手で額の汗を拭った。
修二のバイト先といえば寿司屋。
確かに目の前に見える小さな店は、古びて何だか懐かしい。
だけども小綺麗だ。
看板もなにもないということは、きっとここは裏口で入り口はここの反対側にあるんだろう。
町並みからして、ここには何度か来たことがあるはずだ。
公園からここに来るには、いつも僕が歌っている駅前を通って行けばすぐだ。
だけどここまで来るのに、何故か下り坂や通るはずのない住宅街もあった。
「どうしてわざわざ大変な道通ったの?」