キミヲモイ。

tenuto


「ただいまー」


小さな商店街の片隅にある古びた家。

両親とも商店街の店で働いているから、返事が無いのは当たり前。



「おかえりなさんせー」


家族じゃない人から言われるのは、ものすごく慣れているけど。


靴を脱いで上がった先には、居間から顔をヒョコっと出してる修二だった。

親同士が仲良いのと、修二とは親戚ってこともあって、お互いの家は行き来自由。

修二の家のテレビが壊れてしまったため、テレビ好きの修二はわざわざ僕ん家に来て見るのだった。



居間に入ると、修二は小さなちゃぶ台に肘を置き、ニコニコとお笑い番組を見ていた。

ここに住んでいる本人が傍にいるのに、堂々と真ん中のテレビ前を陣取っている。



「邪魔」

「んなこと言うなや。えーとこやねん」


ついに寝そべり始めて、どこから出したかせんべいを頬張る。

お前ん家じゃないんだっての。









< 9 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop