【短編】THE EXPRESS
もう、見つめるだけじゃないから。
私は、電車に乗った。
――ガタンゴトン
――ガタンゴトン
混んでるはずなのに、私の体は別のところにあるみたいな感じだった。
ケンヤくんが触れた、私の手だけが、熱を持ってる。
きっと、私……ケンヤくんに捕まった。
いや、捕まったんじゃなくて自分から捕まったのかもしれない。
……この純粋な、その人しか考えられないような気持ちを恋と言うなら。
私は今、恋してる。
もう、見つめてるだけじゃなくていい。
だから明日は、手を振ろう。
そしてまた行きたい。
『君の隣』へ――……