【短編】THE EXPRESS
君に届け
「シホ帰ろー」
「ごめん。今日パス」
「えー、今日も?」
拒否された日から全然気分が乗らない。
こんなのじゃ、友達にも嫌な思いをさせちゃうから。
「あ。定期切れちゃった……」
家に帰ると、今日が期限日の定期を更新しにまた駅に行った。
なかなか『緑の窓口』まで行けない。
本当は販売機でも出来るんだけど、私にはよくわからないからいつもこっちで更新してもらってる。
だけど『緑の窓口』は車掌室に近いから。
ケンヤくんと話した、あの場所。
私とケンヤくんとの思い出が詰まってる場所だから、辛い。
だけど私の足は動き出す。
ケンヤくんを見つけてしまったから。
近づきたくないって思いながら
動く私の体。
体は正直だ。
近づくにつれて、胸が高鳴る。
……まだ好きだ。
……ケンヤくんの事が。