【短編】THE EXPRESS
隣にいる友達、西藤 奈那と中河 ようこ。
まだ二人にも話してない、秘密の恋。
……って言うか、正確に言うと
『恋』と言うより『憧れ』のが強い。
いいと思う、このままで。
多分、このままの距離が一番いい。
「シホ電車来るよー」
「えっ?」
いきなり電車が私の前を通った。私と『君』のクリアな世界が閉ざされた。
電車はいつもいい事はしてくれない。
いつも私を現実の世界に引き戻す。
君との時間の幕を降ろす。
「シホ乗るよ」
「ってかさー、前から思ってたんだけど、シホって地下鉄の方がいいんじゃない?」
「いやー、地下鉄お金かかるし…」
「でも、こっちの方が乗り換え多いしさ。駅まで地下鉄のが近いんでしょ?」
うん。そうなんだけど。
私はもうこっちに慣れちゃったし、地下鉄にしたら君を見れないから。
こっちのが、いいの。