【短編】THE EXPRESS
「あ……シホで…」
「わかった。そうだ、今度貸そうか?」
「いいんですか?」
「うん。シホちゃんならなんか大切にしてくれそうだし。貸すのは親父に言ってからだけど」
「ありがとう……」
――ピロピロロー
《ただいまから、電車の運転を再開いたします。繰り返します……》
時計を見た。
すでにもう一時間は過ぎてた。
「シホちゃん、もう行く?」
「あ……うん。じゃあまた明日」
「気をつけてねー」
私は部屋を出た。
まだ午前中だって言うのに、私はもうへとへとだった。
なんか、頭が上手く回らない。
とにかく、電車に乗らなくちゃいけない事は分かったから、ホームに行った。
そこから先は、よく覚えてないけど。
とにかく、ケンヤくんに今度CDを借りる事になったから、
“また話せる”
って言う事しか、頭になかった。