レンズのその先に【完】
どうしても読みたかったのに。
ポイントを貯めているから、どうしてもこの本屋さんで買いたかったのに。
『はぁ…』
大きくも小さくもないため息をついて、やり切れなさを胸に本屋をあとにする。
ズレた眼鏡を外せば、街をうごめく人波を直視してしまい、慌ててかけ直した。
度の入っていないレンズでも、外界を裸眼で見るよりマシだ。
なんの変哲もないレンズでも、有る無しじゃ気持ちの持ちようが全然違う。