レンズのその先に【完】

「俺の顔も覚えてないくらい記憶力悪いのも、相変わらず」



『なん…』





なんであなたが。



そう続けたかった言葉は喉の奥へと戻っていった。





男が、こちらへの歩みを止めないから。





「さすがにあの時は傷ついたけど」





じりじりと歩み寄られ、あたしは背中をびったりドアに張り付けた状態。




ドアを開けて中へ入ってしまえばいいだけなのに、なんだかもうわからない。








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