レンズのその先に【完】
「まぁ…でも、昔と変わってなくて安心したよ、カエ」
その時のあたしたちの距離は、30cmまで縮まっていて。
異常な近さに俯くしかなかった顔が、男の言葉に思いきり上げられたのは言うまでもない。
『な…』
「カエ」
カエ…
それは彼が付けたあだ名で、彼だけしか呼びえないあたしの愛称。
もう一度呼ばれて、やっと気付く。
目の前の、あの眼鏡をかけた“男”は、紛れも無い“彼”だった。